私たちの街にも障害者差別禁止条例を
障害者差別禁止条例は、「私たちのことを、私たちぬきで決めないで」の根幹
滋賀県がようやく動き出しました。2012(平成24)年の滋賀県障害者施策推進協議会の小委員会において、差別禁止に関する滋賀県条例(以下、「県条例」)の制定をすすめることを提言されてから6年が経過しました。その間、多くの人や関係団体から、県条例を求める声は常に出され続けてきました。また、障害者権利条約は、あたりまえに働き・暮らすことのできる「他の者との平等」を求めており、権利条約が実効性を持って日本で実現していくために、多くの法律の改正が行われてきました。しかし、実態は私たちの実感をともなって、「変わった!」と言える状況になり得ていません。
国が制定した障害者差別解消法だけでは不十分な所を補うことと、県民全体の課題として捉え、大きな問題意識としていくことが県条例制定の目的とされてきていると考えます。その中心には必ず、障害のある人自身の言葉や思いをすえて考えることを常にあたりまえのこととして検討されてきました。
「差別はよくないこと」は、あたりまえだけど
差別をすることはよいことですか?と問われれば、大多数の人は「よくないし、してはいけない」「障害のある人に対して、配慮をしないといけない」と答えられるのではないでしょうか。しかし、差別的な事例や配慮されないことは後を絶ちません。
「『差別はよくないことだ』という国民誰もが持つ考えを形あるものにして生かすためには、具体的に何が差別に当たるのか、個々人で判断することは困難であるので、その共通の物差しを明らかにし、これを社会のルールとして共有することが極めて重要」(差別禁止部会の提言より)であり、具体化するための県条例が必要とされています。
県条例を検討する会議においては、「何が障害にあたり」「障害者差別とは何か」を示す物差しになる部分を、滋賀県内の具体的な実態から明らかにし、滋賀の福祉の思想を大切に受け継ぎ、よりよく発展させていくことが、今まさに求められていると思います。
あたりまえに働き・暮らすために、知るためのつながりをひろげよう
県条例は、来年2月の滋賀県議会に上程される予定です。8月から9月にかけて障害のある人たちをはじめ広く県民の皆さんに周知し、意見を反映するために、滋賀県はタウンミーティングを7つの福祉圏域で開催されました。湖東圏域では、国や県の障害者雇用の水増し偽装問題が取りざたされる中、雇用問題を切り口に意見交換を行い、多くの企業関係者の方々が参加され、企業が雇用の場面でできること、しなければならないことに関して意見を出し合いました。
「あたりまえに合理的配慮を会社の仕組みとして取り組んでいる特例子会社」「障害者手帳のあるなしにかかわらず、働きづらさがある人を、会社の一員としてできる仕事を切り出しながら雇用を模索されている中小企業」「雇用の現場と福祉の現場の間で、目に見えない高いハードルをつくってしまっている実態」こうした雇用の場面だけでも、当事者・企業関係者・福祉事業者・行政関係者などの間で、できるにもかかわらず、知らないことで取り組まれていないことがたくさん見えてきます。
まずは、県条例制定をきっかけに、特別なことではなく、あたりまえのこととして、知ることができるつながりや話すことを旺盛に進めていくことを、皆さんの身近な地域で取り組んでいってほしいと思います。
(きょうされん滋賀支部「しがのTOMO」10月号に寄稿 小野)